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一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所
車いす技術課題調査 報告書 平成28年3月
 
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5.業界の聞き取り調査 製造業者ヒヤリング結果
規格、試験検査について

★大手 4 社は試験機を整備し、販売時には自社の試験結果が認められており、第三者機関のものでないと いけないという場面がない。(A 社) ★JIS 規格の検証や、試験条件、値等を決めた過去の経緯をわかっている人がいなくなっている。(A 社)★過大な強度基準等がありはしないかと思う。(A 社) 業界として JIS 改正案を申し出中だが公示にあたり猶予期間が心配。(A 社)★JIS マーク表示が販売を促進しているわけではない、意外に効果はないと認識している。(A 社)★SG についてはごく一部である。(A 社)★試験検査機関について試験費用の競争が必要ではないか。(A 社)★試験機関の試験機の機差の不安あり。(A 社)★ISO ダミーは寸法規定がなく今後どうなるのかとは思っている。(A 社)★現在、SG については、当社からの動きはほとんどない。(B 社) ★できれば、JIS はもっと普及して欲しい。(B 社) ★JIS マークが貼られていないのは、消費者から見れば、車いすの JIS がないのか、あるいは JIS に合格 していないか判断できないのではないか。(B 社)★JIS の認証機関については、現状では問題が多いのではないか(試買試験結果での不整合の問題が明らか になった)。( B 社)★介護保険での車いすレンタルでは税金の一部を使っているので、本来、JIS 等のきちんとした規格に合 格した機種を使うようにすることが必要でなないか。(B 社) ★ISO と JIS の関係をきちんとするべき。(B 社) ★業界及び社内では、最近は座位変換型車いすの研究が中心である。(C 社) ★座位変換型車いすも JIS 化の動き。(C 社) 6 輪型電動車いすの JIS 化も動いている。(C 社)★レンタル事業者は JIS マークがあればよいが必須としてはいない。(C 社) ★補装具は 6 年を耐用年数としており、それを目途にレンタル品を取り替えているようである。(C 社) ★JIS の試験検査方法に問題なしとは言えない状況がある。(C 社) 規格の解釈の適正化が必要である。(C 社) ★ダミーの規格をきちんとしたものにして欲しい。形状・寸法・車いすへの搭載方法を統一したものにし ないと試験検査結果にばらつきが生じる可能性大。(C 社) ★SG は望まれていない。(C 社) ★試験機関での試験費用が高い。競争原理が働いてほしい。(C 社) ★JIS 規格は基準として必要。あるべき基準が在るという意味が大きい。(D 社) ★走行耐久試験については過剰に反応しない方がよい。細かいことでは、試験中の空気入れは合否の否と しないなど通常使用を想定した試験としたい。(D 社)★そもそも耐久試験(ドラム試験)の 20 万回の意味(合理的根拠)はあるのか。(D 社) ★SG は保険がついているというメリットはあるが、製造工程や製品規格自体は JIS と同じではないか。 JIS や SG 取得のコスト負担は決して小さくない。(D 社) ★試験検査は自社でできるので、外注する必要はない。ただし、試験結果のばらつき(例えば試買試験結 果)があるのは困る。(D 社) ★試験検査機関の整合性を公平・中立な第三者機関がきちんと評価する必要があるのではないか。(D 社)★ISO のダミー規格は形状等に課題あり。(D 社)
 
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9.2 車いす規格に関する課題
工業製品に関しては、利用者の安全および利便性を確保するために、機能、性能、表示等に関して規格が設けられ、その規格を満たした製品が消費者に供給されるのが一般的である。現在、車いすに関連 する国内規格としてはJIS規格と SG規格があり、国際規格としてはISO規格がある。JISについては、 2004 年に工業標準化法が改正され、2005 年に JIS マーク表示制度が改正され、現在はいわゆる新 JIS 制度が運用されている。かつては国(主務大臣)または国が承認した機関が認定を行っていた制度から、 国際的な基準(ISO/IEC ガイド 65)に基づいて国の登録を受けた民間の第三者機関(登録認証機関)が認証 する制度に改正された。 規格を満たした製品は JIS マークや SG マークを貼付して、消費者に対して当該製品が、国が定めた安全・性能基準を満たしていることをアピールすることができるのであるが、今回の調査から、車いす 製造業各社は、JIS マークや SG マークの貼付にそれほど積極的ではないことが明らかになった。JIS マークや SG マークの表示が販売の促進につながっているわけではないと判断されているからであろう。 また、車いすを扱う流通業者や消費者の側も、製品選択の際の目安としているわけではないという現状 も、各社への訪問調査から明らかになった。 ところで、2011 年に JIS マークを貼付し市場に流通している手動車いすについて抜き打ち的に試買 検査が行われた 14)。その結果、JIS 規格に不適合の事例が多く見つかった。このことは、車いすに関す る JIS 制度の信頼性を揺るがしかねない事態と認識されなければならない。車いす製造業者に悪質性は ないが(経産省)、JIS 認証審査体制の不備、評価試験方法、今後の制度のあり方等についての早急な検 証が望まれる。これまでに車いすの評価試験について豊富な経験と知識を蓄積し、JNLA 登録試験所で ある一般財団法人自転車産業振興協会技術研究所や一般社団法人日本福祉用具評価センターが公平・中 立な機関として問題解決に貢献することが期待される。 今回訪問調査した各社はいずれも JIS 規格に対して否定的ではなく、むしろ JIS がもっと普及する環 境が整うことを期待している。そのために、今後以下のような課題について検証する必要がある。 ・JIS 登録認証機関の問題を掘り下げる必要があるのではないか。 ・JIS 制度の信頼性を担保するために試験検査実施機関の間の整合性について公平・中立な第三者機 関で比較評価する必要があるのではないか。 ・JIS 制度の基準が本当に合理的なのか再検証することも必要ではないか。 例えば、走行耐久試験(ドラム試験)の連続 20 万回という数値は合理的なのか 通常の使い方にマッチした試験なのかという意見もあった。 ・JIS を信頼性のあるものにして ISO に提案できるようにする必要があるのではないか。 例えば、ダミーの問題を同じアジアである日・中・韓共同で提案できるようにする。 以上より、JIS 規格および SG 規格のあり方についての再検討が必要ではないかと思われる。
 
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9.3 JIS規格とSG規格に関連する問題
車いすに関連する規格として JIS 以外に SG 規格も存在していることについては、各社は疑問を抱い ていることが明らかであった。SG マークを取得すると車いす自体の欠陥による人身事故が発生したと き、賠償する保険がついているものの、今回調査した各社の製品については製品自体に起因する人身事 故は考えにくく、SG マークの取得はそれほど大きなメリットと考えられてはいない。それよりも、JIS と SG の 2 つの規格があること自体が不自然と考えられているようである。なぜなら、SG 認定するに あたって、目視や操作してみるという検査以外に、強度や耐久性等については JIS で定められた試験検 査結果によって確認すると決められており 15)、このことは、JIS 規格を満たしていれば、SG 規格も満 たしていると考えてもよい。つまり、車いす関連の規格は JIS だけにして、もし必要であれば SG マー クに付与されている損害保険を JIS マークの中に含ませて、JIS マークに付加価値を与えるようにすれ ばよいのでないかとも考えられる。いずれにしても、車いす製造業者にとっては、いわば規格の二重構 造は分かりにくいし、コスト負担にもつながる。なお、各社の調査から、JIS 規格を取得する場合も、 コスト負担があるので、JIS に定めた試験検査が実施できる機関が複数存在してコスト等において競争 原理が働く状況があることが望まれていることも明らかになった。そのためにも、試買試験で明らかに なった JIS 制度の不備が改善されて、確固とした信頼性が再構築された JIS 制度となっていることが望 まれる。